HIGASHIMURATA’s blog

東村田昭の備忘録

統合失調症は遺伝病らしい

統合失調症は遺伝子操作が可能になるまで全快しないらしい。

治療薬を飲み続ければいいのだが、難しい。

100人に一人ぐらい発症するらしいが、恋愛結婚が増えると、これが二人、三人と増える可能性

がある。親類縁者の紹介による見合い結婚は昔の人の英知だったのだろう。

当然ながらだが、我が両家にも、知る限り、そういう病の人はいないと思うが、思うの域だ。

祖父、祖母の状況、父母の状況、父母の兄弟姉妹の状況なら分るが、それ以外は不明なの

が普通だろう。それだけ親戚間が疎遠になっているという事だが、止むを得ない。

戸籍にそういう遺伝子病の記載が出来、何代にも亘り、関係する戸籍を取ることが出来れば

不幸な状況を避けることは可能だろうが、無理難題だ。

一日も早い、遺伝子治療の方法が見つかることを祈るしかないのだろう。

息子には結婚するな、娘にはもう子供を作るなという助言が精一杯だ。

以下が、たまたま見つけた論文の要約だ。

- 統合失調症の病因解明・治療に新たな道-

独立行政法人理化学研究所統合失調症※1の発症に関与している遺伝子群を発見しました。

統合失調症の発症には、いくつもの遺伝子と環境要因などが複雑に関与し、また人種に

よっても危険因子が異なる可能性があります。中でもカルシニューリン※3系遺伝子は、これ

までの研究から人種を超えた共通の原因遺伝子と考えられています。

日本人における統合失調症患者家系(124家系)の協力を得て、カルシニューリン系遺伝

子を網羅的に解析し、統合失調症に関与するカルシニューリン系遺伝子を複数同定するこ

とに成功しました。そのうちの1つの遺伝子( PPP3CC遺伝子)は、これまで2つの人種で確

認されていたものです。今回、新たに日本人でも、その関与が明らかになったことにより、

人種を越えた共通の原因となる統合失調症の候補遺伝子と考えられます。さらに、

PPP3CC遺伝子とは独立して、転写に関与しているEGRファミリー遺伝子※44つのうち、3つ

の遺伝子が統合失調症の発症に深く関与していることを世界で初めて突き止めました。

カルシニューリン自体は、中枢神経系に多く発現している酵素です。カルシニューリンは、

統合失調症により変調が示唆されている“ドーパミン神経伝達※5”や“グルタミン酸神経伝

達※6”を調整する作用があります。カルシニューリン系遺伝子群が疾患に関与しているとい

う新たな発見は、今までの統合失調症に関する知見を包括的に説明できる可能性を秘め

ています。また、今回の成果を踏まえ、カルシニューリン伝達系を標的とした、統合失調症

の新たな治療薬の開発が期待されます。

1. 背景

省略

2. 研究手法と成果
(1) カルシニューリン関連遺伝子のスクリーニング

まず始めに日本人統合失調症患者家系(124家系)を対象に、

14個のカルシニューリン神経伝達に関与する遺伝子群*(図1)に存在する84個の一

塩基多型(SNP)を用いて、網羅的な解析(伝達連鎖不平衡テスト)を行いました。

その結果、14個のカルシニューリン系関連遺伝子のうち、統合失調症患者とPPP3CC

(染色体位置: 8p21.3)、EGR2 (同:10q21.3)、EGR3 (同:8p21.3)、EGR4(2p13.2)

の4遺伝子に関連性があることが見出されました。

死後脳を調べたところ、EGR1、EGR2、EGR3遺伝子の発現が前頭前野皮質で減少

していることが確認できました。死後脳におけるこの変化は、気分障害※8罹患者の

死後脳では見られませんでした。

これらの結果は、日本人統合失調症罹患者において、カルシニューリン神経伝達

系の4つの遺伝子の関与を示唆するものです。PPP3CC遺伝子については、利根川

教授らの研究により白人系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人で確認されており、日本

人でも統合失調症との関連が見出されたことから、人種、民族を越えた共通の原因

となる統合失調症の候補遺伝子と考えられます。さらに、転写に関与するEGRファミ

リー遺伝子に属する4つの遺伝子のうち3つの遺伝子で統合失調症との関連性が世

界で初めて発見されたことにより、EGRファミリー遺伝子群が何らかの役割を果たし

ていると考えられます。

*14個のカルシニューリン系関連遺伝子
PPP3CA、PPP3CB、PPP3CC、PPP3R1、PPP3R2、EGR1、EGR2、EGR3、
EGR4、PPP1R1B (DARPP32)、FKBP5 (FK506 binding protein 5)、FKBP1A
(FK506 binding protein 1A)、RYR3 (ryanodine receptor 3)、CDK5 (cyclindependent
kinase 5)

(2) PPP3CC遺伝子およびEGRファミリー遺伝子群の統合失調症との関連

EGRファミリー遺伝子の中でも、EGR3遺伝子は、従来の連鎖解析研究で、統合失

調症の候補遺伝子の存在が強く疑われていた染色体8番短腕に存在しており、

PPP3CC遺伝子からはわずか(252 kb)しか離れていません。強い連鎖領域には複

数の関連遺伝子が存在し、さらにそれらが機能的に関係している可能性がありま

す。そこでPPP3CC遺伝子とEGR3遺伝子がそれぞれ独立して疾患発症のリスクに

寄与しているのか、あるいは2つの遺伝子の効果は区別できないのかどうか調べる

ため、この領域(8p21.3)の関連シグナルを詳細に解析しました。

まず始めにPPP3CC遺伝子およびEGR3遺伝子を含む染色体8番短腕(8p21.3)領

域(564 kb)について、49個のSNPマーカーを用いた詳細な連鎖不平衡・関連シグナ

ルの検討を行いました。その結果、PPP3CC遺伝子とEGR3遺伝子は異なる連鎖不

平衡領域に存在し、それぞれに独立した関連シグナルであることが確かめられまし

た。さらに、PPP3CC遺伝子領域に強い関連シグナルがある家系を除外した

再解析では、EGR3遺伝子領域により強い関連シグナルが検出されました

(P=0.0004)。これらのことから、2つの遺伝子はそれぞれ別に統合失調症発症リスク

に寄与していることが示されました。

次に、統合失調症罹患者の死後脳でのEGRファミリー遺伝子のメッセンジャーRNA

の発現についてquantitative RT-PCR アッセイ法※9を用いて調べました。調べた脳

部位は、統合失調症で機能異常が示唆されている背外側前頭前野です。

その結果、統合失調症では

EGR1、EGR2、EGR3 遺伝子発現が有意に減少していることが確認できました。

一方、PPP3CC 遺伝子発現には、統合失調症罹患者脳と対照者脳との間に差は

みられませんでした。また、EGR4についてはこの部位での発現量が少ないため、信

頼できるデータが得られませんでした。

(3) EGR3遺伝子に存在する多型の検討

省略

3. 今後の期待

統合失調症はいくつもの遺伝子と環境要因などが複雑に関与して発症すると考えら

れていますが、詳しいことはよくわかっていません。今までの研究では、グルタミン酸

容体とドーパミン受容体を介したシグナル伝達系の2つのカスケード※12の機能異常が

重要であると考えられてきました。今回、得られた研究成果は、第3のカスケードとして

新たにカルシニューリン神経伝達系が統合失調症に重要な役割を持っていることを提

唱するものです。さらに単独の遺伝子ではなく、同じ神経伝達系内の複数の遺伝子の

関与を示したことも注目に値します。

またカルシニューリンは、今まで指摘されていたシグナル伝達系の下流で重要な役割

を担っていることから、病気の原因を探る病因論的にも興味が持たれます。今後は、“こ

れらの神経伝達系がどのように関連して統合失調症に関与しているか”、あるいは“各

シグナル伝達系と統合失調症の諸特徴とは関連があるのかどうか”などを明らかにす

る研究が必要です。カルシニューリンは、中枢神経系に多く発現している酵素であり、グ

ルタミン酸神経伝達系やドーパミン神経伝達系以外にも、統合失調症関連遺伝子とし

て注目を浴びているニューレグリン1※13やAKT1/GSK3β※14などの神経伝達系とも関連

があります。これらの知見を統合すれば、統合失調症のメカニズムを包括的に説明でき

る可能性があります。

さらに、これまで統合失調症の治療薬はほとんどがドーパミン系神経伝達をターゲット

にして開発されてきましたが、薬の効果が出にくい統合失調症患者もいました。今後

は、カルシニューリン神経伝達系を標的とした新たな治療薬が開発されることによって、

多くの統合失調症患者の予後が改善されることが期待されます。